「ここら辺一体を仕切ってるのがヘブン。それは知ってるよね?」



「あぁ。ヘブンロードがあるってのも聞いた」



「それなら話が早い。あの道は他のチームも走りたいの。でも、ヘブンがそれを許さない」



「なんであの道が?」



「それはよくわからないけど……1番力を持ったチームだけが走れる道。誰もがそれを欲しがっている」



「それが揉めてる理由か?」



「そう」



たかが“道”のことで揉めるなんてあたしにはよくわからない。



でも、明美の顔があまりにも真剣であたしはそのまま話を聞いた。



「北高生はヘブンが多いでしょ?」



「そうらしいな」



「それと同じように東、南、西、それぞれがチームと繋がっている。昔から北と西が仲が良くて、東と南が仲が良い」



「へぇ~」



「今回は南高と繋がっているチームがいきなり力をつけ始めた。そして、ヘブンを狙っている」



明美の説明はわかりやすくて、チームのことはまったく知らないあたしにも理解できた。



「だから、カナも気を付けなよ?」



「なんであたしが?」



チーム同士が揉めてることと、あたしは無縁だろうが。



「あんたはトップの女でしょ」



明美の口調が少しきつくなる。



「豊先輩は勿論。あんたも狙われるかもしれないの。そういうもんなの」



玄関での豊の言葉を思い出す。



“1人で出歩くな”



きっと明美の言っていることは間違っていない。



あたしは狙われる可能性があるんだ。