煙草を持っている逆の手であたしの頭を撫でながら「何かあったか?」と声をかけてくれる。



あたしはブンブンと首を横に振り、豊の背中に回した手にギュッと力を入れた。



「帰れるようになったら言え」



そう言ったきり、豊は何も話さない。



でも、あたしの頭を撫で続けてくれている。



同じリズムで上下に動く手に心が落ち着いていく。



「豊……」



「ん?」



「帰ろう」



「あぁ」



あたしは豊を見上げた。



「そんな顔もできるんだな」


「なに?」



「なんでもない。行くぞ」



あたしは来たときと同じように差し出された豊の手に自分の手を重ねる。



そして、豊はあたしの鞄を肩からさげた。