「こんな風に空見上げんのなんて久しぶりだ」



「たまにはいいかもね」



「そうだな。綺麗な場所もあるんだな」



豊の言葉が心に響く。



汚い世界でもこんな風に目を凝らせば綺麗な物だってある。



目に映るものが汚いものばかりだって、ふと見上げるだけで、視界には綺麗なものが一面広がる。



そんな風に言っているような気がした。



あたしもそう思う。



汚い世界の中に閉じこもっているのはきっとあたし達自身。



「豊、ありがと」



「あん?」



「あたし、あんたに出会えて汚い世界から少し抜け出せた」



「そうか」



「こんな風にもっと綺麗なものが見たい」



「俺がいくらでも見せてやるよ」