あたしはあんたのこと香りだけでわかってしまうほど、近くにいたんだろうか?



それともそんな事がわかってしまうほど、あんたを気に掛けていた?



「カナ、悪かった」



あたしを包み込む腕に力が入る。



「話を聞いてくれ」



聞くよ。



聞くに決まってる。



でも、もう十分だ。



あたしを追い掛けてくれたあんた。



あたしを包み込んでくれるあんた。



あたしを安心させてくれる香り。



あたしにはそれだけで十分過ぎるくらいだ。



何も聞かなくたって、もう平気。



だって、あんたが来てくれたから、あたしはもう1人じゃない。