「何かあった時はすぐに言えよ」
「あぁ」
あんたに言ったところで何も変わらないと思うけどな。
「おい。電気くらいつけろ」
真っ暗な居間のソファーに2人で腰掛けているなんてなんだか気味が悪い。
「おいってなんだよ……」
「あたし、名前しらねぇんだよ」
「はっ?」
電気を付けに立ったアイツが振り向いた。
「一緒に住んでるのにか?」
「知らねぇ」
「初めて会ったときに自己紹介したよな?」
「興味なかったから」
ハァ~と溜息をついた後、「祐樹(ユウキ)」と名前を教えてくれた。
「祐樹ね」
「お前の頭ん中は一体どうなってるんだろうな?」
「普通だよ」
「仮にも家族になった人間の名前を覚えてないなんて普通じゃない」