「あぁ、好きだよ。好きだから別れたんだ。でも、毎日会いたくて……一目でいいから姿を見たくて……」



震える声が静まり返った病室に響き渡る。



「なら、全部話せよ」



「で、でも……」



「翔はそんな柔な男じゃねぇよ。喜んで静香の全部を受けとめてくれる。そういう奴だよ」



あたしは翔と出会ってからほんの少ししかたっていない。



でも、わかるんだ。



翔や豊は人の心を見ようとする。



そして簡単に裏切ったりはしねぇって。



「話してみるよ」



ボソッと呟く静香の声にあたしは笑みがこぼれた。



「じゃあもう泣くなよ」



「泣いてねぇよ。それよりカナは年下だろ?勝手に呼び捨てにしてんじゃねぇ」



「あぁ、話の流れでついな」



あたしはポリポリと頭を掻くとバシッと静香に背中を叩かれた。



「痛ってぇな!!そんなに力あるなら死なねぇよ」



「病人に向かって“死ぬ”ってフレーズは禁句だろ?!」



あたし達は顔を見合わせてゲラゲラと笑う。