「あ……静香」



黒髪を綺麗に靡せた静香の姿がある。



翔は固まったように動かない。



「翔。豊に会いたいんだけど、私ここに入れないから」



もうそんな風におしとやかな演技などしなくていいのに。



「呼んでくるよ」



翔は冷たくそう言うとあたしの手を力強く握り締め、扉を開けた。



「大丈夫か?」



「何が?豊どこにいるだろうな?」



とぼけてる翔の横顔が引きつっていたから、あたしはそれ以上何も言わずに豊を探した。



「いつものソファー」



あたしが指を指すと翔は豊の元へと足を進める。



「豊」



「あぁ?」



ふんぞり返りながらあたし達の顔を見る豊。



「ドアの前に静香がいた。お前を呼んでくれって」



「わかった」