「カーナちん」



だいぶ温かくなってきた教室でウトウトと眠りにつきそうになっていた時、大きな声と共に翔が顔を出す。



「なんだよ。寝そうだったのに」



あたしの返事がそんなに嬉しかったのか、翔は笑顔で教室の中へと入る。



「キャー!!」



「翔先輩!!」



集まる女に優しく対応する翔があたしの机まで来る頃には日が暮れていそう。



囲まれて見えなくなった翔の姿めがけて、「何の用だよ」とあたしは大きな声を出す。



「屋上に来ない?」



「なんで?」



「何でって……」



翔は人を掻き分けるように体を捻りながら集団の中から顔を出した。



「カナちん、最近屋上こないじゃん。俺寂しくて」



あたしが返事をする前に「私が癒してあげます」と一人の女が翔の前に名乗りをあげた。