そして、合同練習初日。
彼に会ったのは初めてのことだった。

黒いマントみたいなぼろ布を纏った、一見不思議な青年だった。
彼は誰もいないホールで「ぉ、ろちぃ、ぅ」と言った。

僕はその言葉を聞いたその刹那、彼の境遇を容易に悟った。

僕もその挨拶に口パクで返した。

「よ ろ し く」

彼もピン!と驚いた顔をしてその後、にこやかに笑った。
「ぉ…ぢ」掠れ気味に鳴らした音を僕へ渡してピアノの前へと腰掛けた。