空を飛ぼうと思ったのは、地に足がつかなかったからだ。

この町で一番高い建物へ足を運んだ。
背中はズキズキと痛かった。
十階もないビルは、ちょっと古くて、本当にここから飛び立てるのか不安になった。


「おい、セーラー」


声をかけたのは男。
公園のベンチに腰かけている。
このビルの屋上は、公園になっている。あんまり人は来ないけれど。

セーラー服を着ていた私は怪訝な顔をしただろう。
知らない人に話しかけられてゲンナリだ。

「なんですか、ピアスさん」

その男は、嘘だろ、と思うくらい耳に穴を開けていた。ゴツい金属がピカリと光る。

それを聞いて何が面白いのピアスさんはふふっと笑う。
私はヤバィ人だと思って無視して進んでいくと彼は「馬鹿な真似すんなよな不快だ」と舌打ちした。