雨なんて厄介なものが僕と君を繋ぎあわせた。
しかし、手繰り寄せて手にした赤い紐を上手に結ぶことなんて僕にはできなかった。

それは雨の日。
出会ったときみたいな、しとしと 湿った生温い空気の奥にある雨だった。

何も巻きついていない小指をそっと眺めて
雨止みを待つ君を見つめた。

制服を濡らさないように人の居ない昇降口にそっと立っている。
髪の毛を指先で弄って、細めた目は少し冷めてていたようにも思う。

仕方ない空間を僕は「ねぇ」の一言で掻き消そうとしてみる。
が、虚しく彼女は「………なに」と返しただけだった。

ぴたぴた雨音が静寂を遮って僕は言葉を続けようとした。

「雨、会ったときみたいだ」


セーラー服の彼女は

「そうだね」

と静かに言った。

それだけでなんだか、僕は今日の天気が嫌いになりそう。

ふぅ とため息を吐いた僕を一瞥した彼女は、無表情に訊ねた。