駆けた世界の征服録



曲が終わった後
彼が「すごい!」と、手を動かした。
僕らの共通言語だった。僕も指先で「ありがとう」を精一杯作り出した。
初めてなのに、心はもう繋がっている気がした。


僕は、声が、出ない。
耳は聴こえるけど、返事ができない。なんとも、虚しいこと。
彼とは真反対だ。

それを聞いたとき彼は
「ほんとだ 違う………でも 同じだ」とやっぱり最初に言ったときみたいに“同じ”と笑った。



それからの合同練習は楽しく過ごした。
時間が早く感じた。

彼は綺麗だ。
世界は綺麗だ。

僕だって綺麗だ。

なんて無条件に思う時間だった。