きっとみんな、家族と一緒に入学式に来るんだろうな....





私も.....パパとママと一緒に来たかったな。



校門前の看板で写真を撮って。




この桜並木だって、3人で並んで歩いて。




式が終わったら、ママの手作りのご馳走をみんなで食べるの。




そんな想像をしていたら、再び涙が流れてきた。




“あの日”から、私の時計は進んでいるようで止まったまま。




ダメだ......っ。




これから入学式に向かうっていうのに。
泣いてなんていたら。




前を向き直り、歩きだそうとした時だった。




「桜......ついてる。」




後ろからそんな声が聞こえ、髪の毛を触れられる。




振り返ると、そこには漫画から飛び出してきたような。





“美少年”とは、きっと彼のような人を言うんだろうと言うほど、顔立ちの整った男の子が立っていた。




そしてその手には1枚の桜の花びら。




きっと、私の髪の毛についていた桜を取ってくれたんだ。





「あ、ありがとうございます。」



そう言ってペコリと頭を下げる。




「いえいえ。急に声かけちゃってごめんね。その制服、白坂(しらさか)高校だよね。」




「あ、はい....今日から入学で.....」




男の子も制服を着ていて。




学ランだからパッと見じゃどこの高校かは分からないけど。



首元にひかる校章は見たことがあって。




たぶん、この男の子も同じ高校だ。




「そうなんだ。実は俺もなんだ。奇遇だね。」




そう言うと、ニコッと笑った彼。