「変な男に声掛けられたりしないように、俺から離れるんじゃねーぞ。」
なんて言いながら頭に手を置かれ、
「は、はい。」
と、素直に返事をする。
「ん。いい子。」
春くんのペースに乗せられてばかりだ。
「「....」」
自然とふたりが無言になった。
今にも触れそうな肌。
少しでも春くんの方に体を傾ければ、すぐにでも肌と肌が触れ合う位の距離感。
ドキ、ドキ、ドキ。
なにか言葉にしたいのに、何も出てこない。
お互い、海水浴客で賑わう海辺を見つめる。
春くんは今、何を考えているんだろう。
そんなことを考える。
でも、こんな無言の時間も嫌ではなかった。
お互い言葉を交わさなくても、心地の良い雰囲気。
「華。」
少しの沈黙を、春くんが破る。
「ん?」
「もっといっぱい、思い出作ろうな。」
春くんの方を向けば、ニコッと温かい笑顔を浮かべていて。
「うんっ!」
そんな春くんの笑顔に、私も自然と笑顔になっていた。