グッと唇を噛み締めて、棚の間を歩いていく。
時折チラリと並んだ商品に目をやっては、棚はやたら綺麗なのに店の中も外もボロボロだな、なんて関係ないことで思考を紛らわせながら。
ここにあるもの全てに、誰かの思い出が詰まっているのだと彼女は言う。
ここにあるもの全てに、大切な人へ向けた想いが詰まっているのだと彼女は言う。
だからなんだと返してみたら、だからここにあるものは特別なのだと、それに惹かれてここに来る人も特別なのだと、彼女は笑顔でそう言った。
今は鉢合わせたくなかったから、時折彼女の気配を探りながら、奥の棚は避けてドアの方に向かって進んでいく。
このままこっそり、帰ってやろうと思った。
帰って宿題を終わらせて、晩ご飯までゲームでもしよう。
そう言えば、読みかけの漫画もあったな、なんて考えながら歩いていると、ふと視界の端に捉えたものに、意思に反して足が止まった。
初めて来た時からずっと、なぜかそれだけが目に止まって、来る度にまだそこにあることを確かめるように、自然と足が向いてしまう。



