「どうぞ」と誘われると、このまま帰るわけにはいかないような気がして、そろりと踏み出した足で恐る恐る中に入る。
店の中もまた、外観で受けた印象を裏切ることなくボロかった。
むき出しの電球はどこか明かりが弱く、壁にも天井にもなんだかよくわからない染みが模様のように広がっている。
そこに、棚がズラッと並んでいた。
人が一人通れるほどの通路を残して、彼女の身長と同じくらいの高さの棚が、入口からずっと奥まで並べられている。
その棚だけが、建物全体のボロさとは違って妙に新しい。
実際にはさほど新しくはないのかもしれないが、他の物がボロすぎて異様に新しく見えた。
彼女はにっこり笑って脇に避けて、棚の間を手で指し示したので、誘われるままに足を踏み入れる。
通路を挟んで向かい合わせになった棚には、大きめの写真立てのようなアクリル板に挟まれて、便箋と封筒が並んでいた。
一瞬、専門店なのかと思った。
けれど、よく見れば並んでいるものはどれも柄や色が違う。
大きさや形でさえ同じではない。
ひどくチグハグなそれらを眺めながら、一通り棚の間を歩く。



