彼女にその質問をされたのはこれが二回目で、一回目は初めてこの店に足を踏み入れた時。

雨で部活が休みになって突然手に入れた自由な時間、真っ直ぐ家に帰るのもつまらないと思いながら歩いていた時、たまたま目に入った建物になぜだか異様に惹きつけられた。

手作り感溢れる雑な白塗りの壁、塗装が禿げかかり錆び付いて赤茶けた屋根。

ノスタルジックな雰囲気を放つ古い筒型のポストには、色褪せた“open”の文字が書かれた木の板がかけられている。


「オープンってことは、店か……」


そんな軽い気持ちで、ほんの暇つぶしのつもりで手をかけたドアは、妙に立て付けが悪くて中々開かなかった。

それが逆に、どうしても開けてやりたい気持ちにさせる。

ドアを破壊しそうな勢いでガタピシ言わせながら無理やり開けると、その物凄い音を聞きつけたように、どこからともなく胸当てのついたエプロン姿の女性が現れた。


「気持ちを伝えるお手伝い致します。あなた好みの便箋を、もしくはお相手好みの封筒を選んで、気持ちを伝えてみませんか?」


現れるなり突然“いらっしゃいませ”の感覚でそう言い放った彼女は、笑顔で店内を指し示す。