この店で商品を選んだら、その代わりとなる便箋か封筒を持ってくれば、それでお会計は終了する。

売り買いするというよりも、物々交換システムで商っているところが、またこの店の不思議さに拍車をかけている。

ただでさえいつ来ても閑古鳥が鳴きまくっているのに、よくもまあそんな原始的なシステムで店が成り立っているものだ。

その秘密も以前聞いたことがあるが、当然のように答えは“秘密です”。


「間もなく卒業を控える先輩に、ようやく気持ちを伝える決心がついたと言っていましたが……。さて、どうなったのでしょうね」


唐突にポツリと呟いた彼女は、とても綺麗に背筋を真っ直ぐ伸ばしたままスッと立ち上がって、体の向きを変えた。


「大好きな先輩へ向けた真っ直ぐな想いは、とても素敵です。きっとこの封筒も、選んだ方に、真っ直ぐな気持ちを伝える勇気をくれるでしょうね」


向かい合って立つと、高校生男子の平均身長より、彼女の方が僅かに背が低い。

でもそれは、ヒールがある靴を履かれたら今度は僅かに越されてしまうような、そんな些細な差でしかない。


「では、あなたが伝えたい想いは、なんですか?」


朗らかに笑う彼女の笑顔に、不意に懐かしい姿が重なって、また古傷が疼き出すように胸が痛くなった。





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