私に駆け寄って来た葉山君は、さっきまでの郵便局員の制服姿とは違い、カジュアルなシャツにパンツ姿で。

そんな私服姿でさえ、初めてお目にかかる私には眩しく見えて、無意識に下を向いてしまった。


「どした?」なんて葉山君が少し屈み、私を覗き込むように下から見上げるから。
そんな葉山君とバチッと目が合ってしまった私は余計に恥ずかしくなり、どうしていいかわからなくて意味も無く頭を左右に振る。


ホント、どうしたんだろう。
卒業してから葉山君への気持ちは忘れたと思っていたのに。

大学では、葉山君とは真逆のような人を好きになったし告白もして、しっかり振られている実績だってある。

なのに十年ぶりに会った葉山君を前に、ドキドキしてしまっている私は……。


「そうだ、さっき瀬戸川から窓口で受け取った手紙だけど。今読んだ方がいい?」


葉山君に言われ視線を上げると、桜色の手紙が目に留まる。
そうだ、再会に動揺していてすっかり忘れていた。
葉山君の手には、窓口で私が出そうとした葉山君宛の手紙が握られているじゃないか。


「あ、それ。返して……」

「これって、俺宛だろ? それより、瀬戸川が持ってる手紙は何?」


胸元に押さえつけていた空色の手紙を指さした葉山君に、じっと見つめられた。