ただ、分かっているのは。
葉山君も私も、十年前の高校生だった私達じゃないということ。
あの頃の様な純粋な気持ちで、葉山君が来るのを待っているわけじゃない。


「手紙、葉山君が私に送ってくれたか確認しなくちゃ」


表向きの理由は、私に届いた空色の手紙が葉山君からのものなのか聞くこと。
けれど。
今、葉山君を待っている私の心の中には、それ以外の気持ちが生まれている。

瑞穂ちゃんに「イケメンになってたら……」なんて助言された事も一理あるかもしれないけれど。

十年ぶりに会った葉山君が食事に誘ってくれた事だけでも、単純に嬉しい。
普通だったら「久しぶり」で終わってもおかしくないはずなのに。


バッグから取り出し、空色の手紙を胸元に当ててみる。
この手紙が届いてから、私の周りに変化が起こった。
私自身でも不思議なくらい行動的になったりして。
音信不通になっていた瑞穂ちゃんとも会う事が出来たし、美園の気持ちを知る事が出来て今まで以上に仲良くなれるような気がしている。

全て、この手紙のおかげ。

だから。
あと一つ、私がやり残している事があるとしたら……。


「瀬戸川、お待たせ」


___あの頃の気持ちを、葉山君に伝える事。