オレンジの夕陽が暖かく感じる西日を背に受けながら、我が家のポストを覗き込む。

学校から帰ると、まずポストの中を覗くことが日課。
私宛の郵便物が届いていると、それがダイレクトメールでも他愛もないハガキ一枚でも何故か嬉しくて。
私だけに「特別なもの」が届いたような気分になる。

二十五歳になった今でも、その癖が抜けずに毎日ポストを覗いてしまう。


「今日は何にも入ってないや」


塾の案内ハガキや通信教材のダイレクトメール等が届かなくなるような年齢になったんだなぁ。
懸賞で何かが当選したとか、年賀状や喪中ハガキ。
美容院からの夏季・冬季休業案内ハガキに、通販化粧品からの新商品パンフレット。
そんなものくらいしか、最近の私宛には届かなくなった郵便物。


少しガッカリ気味に肩を落とし、私はポストの蓋を閉め玄関に向かう。
玄関の鍵穴にバッグから取り出した鍵を差し込んだ時。


「瀬戸川香澄(せとがわかすみ)さん、ですか?」


背後から男性に声をかけられ何気なく振り返ると、視界に飛び込んで来たのは門柱の外に立っている郵便配達員さんの姿だった。


「はい。そうですけど?」

「お手紙です」

「あぁ、はい。ご苦労様です」