――――今でも、あの時の事を思い出す。


あれは確か、小2の時だったっけ。



葉音 聖«ハオトセイ» side


―――ガヤガヤ。


終業式が終わり、クラスは盛り上がっていた。


勿論、明日から冬休みだからなんだけど。


〇〇くんはどこいくの?とか、


〇〇ちゃんスケート行こうか、だの。


他愛もない会話で、クラスが冬休みモード。


転校生の僕からすると、居場所はないわけで。


クラスの輪から外れて一人、空を仰いでいた。



「……」



ガラッ……


教室の扉が開き、担任の先生が入ってくる。


皆は相変わらずガヤガヤしているが、先生が静かに、と言うとおさまる。


先生は、チャーミングポイントの大きな口を開けて言った



「明日からは、冬休みだ。皆、ケガなく元気に過ごすんだぞ!!」


「「はーい!!」」


「ということで、学級レクを開催するぞーっ!!」



担任の一言に、皆はざわついた。


やったあ、と嬉しそうだ。


レク……?


何それ……?


言葉自体知らない僕は、首を傾げる。


先生は、笑顔で言った。



「今からチームを作って、宝探しをするぞ!」


「「わあーい!!」」


「チームは、10人で作ってくれ。一番見つけられた人には〜」


「「??」」


「メダルとお菓子をプレゼント!!」



担任の言葉に、皆の目が輝く。


そりゃそうだ。


お菓子とかキラキラしたメダルは、子供にとって嬉しいもの。


実際、あまり乗り気じゃなかった僕も、何故か胸は高鳴っていた。



「じゃ、チームを作ってくれ!友達をたくさん見つけろ〜!」



先生の一言で、皆が一斉に席を立って歩き回る。


僕はそこで、厳しい現実に直面する。


周りに人はいなかった。


改めて後悔。


そっか。


僕……友達いなかったんだ……(TдT)



「そりゃ、そうか。僕、てんこーせーだもん。」



誰も話しかけてなんかくれないか……。


しょぼん、と肩を落とす。


今まで友達ができたことはなくて、こんなの慣れてるのに。


やっぱり、落ち込むなあ……


先生と組むかな?



「ねえ!」



歩み出した僕の腕を、小さな手が掴む。


驚いて振り返る。



「私と組もう?」


「え……」



見ると、ツインテールに大きな瞳をした小柄な女の子。


見るからに友達が多そうな子。


なんで、僕なんかに……?



「でも、君には友達いるんじゃー」


「いいの!……あなたと組みたいの」


「えー・・・///」



尚も、その子は僕の手をひく。


僕は、半ば強引に手をひかれて歩き出す。


連れられて来た場所には、8人の人。


皆、僕を不思議そうに見ている。



「鈴音、見つかった?てか誰それ?」


「知らない、田中くんだっけ?」


「葉音、聖……」



拙い言葉で、話す。


会話からして、この子の名前は鈴音(レオン)と言うらしい。


鈴音は、もう1度僕を見る。



「全然ちげえじゃんw」


「うるさいなー江連。」



鈴音は、江連(エレン)という小柄な男の子に文句を言う。


そして、僕の肩を掴むと前に押し出す。



「え」


「えーと、田中聖くんだっけ?よろしくね!!」


「葉音聖だってば……ぷっ、ははっ」



思わず吹き出す、僕を周りは不思議そうに見つめていた。


まるで、珍しいものを見るみたいな。


僕は、すぐに表情を変える。



「お前……笑うんだな!」



日本人にしては珍しい、金髪の端正な顔立ちの江連が僕を見た。


う……。


ジロジロ見られてる。


苦手だな……


相変わらず、俯いていると叱咤される。


声がした方を見ると、鈴音がしかめっ面。


な、何?ボクなんかした?



「聖、した向かないでよ」


「そんなこと言われても……」


「確かに。鈴音、むしんけーだぞ」



江連が、鈴音の額を指で弾く。


仲、良さそうだな……。


ズキッ


あれ?


何で今僕は、胸が傷んだのだろう。


胸に手を当て、不思議に思う。


すると、目の前に差しだされた手のひら。


顔をあげると、笑った江連の顔。


江連が差し出した手のひらを、しばらく見つめる。


これは?


どういうことだろう。


戸惑う僕を見て江連は、ふきだす。


彼の笑顔は、太陽みたいだな。


そんなことを考えながら、彼の綺麗な瞳を見つめた。



「お前面白いな、握手だよ!あーくーしゅ」



尚も手を僕に伸ばす江連に、ふっと笑う。


伸ばされた手を掴むと、彼は僕の手を強く握りしめた。


江連は、太陽みたいな笑顔を再び見せると言った。



「聖、これからよろしくなっ!!」


「う、うん……よろしくっ」



俯いていた顔をあげ、頬を染めた。


そんな僕の背中を叩くのは、鈴音。


彼女は、大きな瞳で僕を見つめると柔らかく笑った。



「前、向けたねっ!」


「っ!!///」



僕は喜びと共に、あるものを知った。


天使のような容姿に反して、不思議な魅力がある彼女。


僕は、そんな彼女に、“恋”をしていたのだ。



「よっしゃあ!!俺ら絶対1位な!!」


「任せろ!!」


「「いえーい!!」」



宝探しは、やっぱり行動力のある江連が中心となったおかげで。


1位になった。


あの時、江連がものすごく喜んで皆の肩を抱いたんだっけ。


そしたら、皆が「江連ひっしー」とか言って。


それに反抗する江連を見て、笑いあった。


僕は、純粋に楽しかった。


それからというもの、放課後も。


休み時間にも、皆で遊んだんだ。



彼女は、歌が好きだった。


江連もまた好きだった。


いつか皆でテレビに出たいね、なんて夢を語ったりもした。


あの時は、本当に楽しくて、楽しくて。


ずっとこの時が続けばいいと思った。