高岡さんと、お互いに通勤で利用する新宿駅で待ち合せた。
予め、どんな料理が食べたいかって、リクエストされていたんだけれど、3時のお茶菓子の時間に割と重たい洋菓子の焼き物を食べたから、本当に何も食べられない状態だった。
彼の姿を見つけて、駆け寄る。
相変わらず、スマートなビジネスマンっていう感じだ。
目を引く雰囲気を持ってるから、高岡さんだとすぐにわかった。
彼は、どうだった?変わりない?と聞いてくれた。
私は、「ええ」とあいまいに答えた。
「さて、君から、はっきりしない答えしか返ってこなかったから、お店、どこにも予約してないけど、どう?時間が過ぎていく間に、何かいいアイディアでも浮かんだ?」
私は、少し考えてから言う。
「高岡さん、ごめんなさい。実は、食欲がほとんどないの。だから、どんなに美味しいシェフの店に連れて行ってもらっても、ほとんど食べられそうにないの」
彼は、迷惑そうに聞いてる様子はなく、むしろ好意的に話を聞いてくれた。
「そっか……よかった。実は、僕も食欲がこれっぽちもないんだ」
彼は、指でジェスチャーをしてくれた。
「具合悪いんですか?」
「体も胃袋も、どこも、何ともないんだけどね」
「それなら、軽く飲みたいです」
「よかった。僕のその方がいな。じゃあ、静かに飲めるところに行こうか」


