「まあ、とりあえず順調で何よりだね」
私は、伸びあがって彼の肩をポンと叩く。
「ええ、鍛えてもらったおかげで、次の部署では、俺、よくできた人間だと言われましたから」彼は、私が背伸びする様子を見ながら、満足そうに言う。
「何よ、それ。私の前だけ言いたいこと言ってたの?」
「まあそうです。でも、そのおかげですごく後悔したものですから」
「んん、先輩を大事にしなさいってことね」
「ところで先輩、まだ森沢さんのままですね?」
彼は以前のように、私をイラつかせようと、いたずらを思いついた子供のように言う。
「だったら、何よ」そう来るわけね。
「まだ、嫁に行ってなかったんだ」
「何ですと。見ていらっしゃい。そのうち、素敵な旦那見つけるから」
「期待してますよ」
余裕の笑みを浮かべて、それじゃあとその場を離れていった。
何だろうねえ、まったく。
いつの間に、あんな余裕見せるようになったんだろう。


