「洋服などのアパレル用の生地にするよりも、まず、自然の風合いを生かした寝具に絞ってはどうかなと」
荻野君ならそう言うだろうなと思ったことを言う。
心地よい天然素材だと聞いたので、洗いざらしのシーツに使ったら、気持ちがいいのかなと思った。
「そうだな。そういう方向なら考えてもいいかも。他と差別化してデザインも風合いを生かして」井上さんが頷いてくれた。
「ええ」
「わかりました。検討してみましょう。後で、サンプルをいただけますか?」
井上さんがにこやかに言う。
「もちろんです」
井上さんを、送り出してから私は、ほっとしてため息をついた。
「どうしたんですか?緊張してたみたいなため息ついて」
「課長の代わりだと思うと緊張して」
確かに、営業として顧客と毎日、何度も応対してるけど、自分んがへまをすると人の信用を落とすようなことに、なりはしないかと思って、緊張する。
「十分ですよ。余裕でこなしているように見えましたよ」新井さんが誉めてくれた。
「本当に?」
「はい」やっぱり、取っつきにくいところがあるけど、悪い人じゃない。
「課長、帰ってこなくても大丈夫だね。そう言ってメールしてあげようか?」
私が、冗談混じりに言う。
「本当に、どうしたんでしょうね」
「ん、そうだね」
体が頑丈だから、病欠なんかも、ほんとにしなかった。
「梨花も会いたかったな」
急に、かん高い声がして、その場の空気が一変した。
「お茶持ってきてくれた時に、会えたでしょ?」
私も、彼女をからかうように言う。
「ineさんときだけだよな。率先してお茶持ってくるの」新井さんも、続く。
「だって、梨花だけ入れてくれないんだもん」
「それは仕方ないだろう?」


