二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~


用意した資料を、井上さんの前に置く。

ineホームとの協同開発で、何か新しい商品を作り出そう、
というコンセプトで新しいプロジェクトが動き出していた。

新井さんが資料に沿って、説明する。

「うちのバイオ系繊維は、トウモロコシなどの植物を原料としています。
原料となる植物から抽出したでんぷんを発酵して乳酸を作り、それを結合させてポリ乳酸を作るんです」

井上さんが、じっっくり資料を読むのを、私と新井さんが見守っている。

「これ、半合成繊維じゃなくて、天然繊維ってこと?」

「はい。今のところ、百%とは行きませが……」新井さんが補足する。

「ああ、そうか。商品を廃棄する時、自然に分解するとか?」
井上さん、顎に手を当てて頷いている。

「はい。それと、焼却時の燃焼熱が低いのと、土中に埋めると……土にかえります」

「だとすると、繊維の融点は?」

「およそ、170℃程度」

「じゃあ、アイロンの使用は厳しいな」

「ええ、熱に弱い繊維ですので30℃以下の水での洗濯をおすすめしてます。アイロンやタンブラー乾燥は禁止です」

「だとすると……」