二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

「ineホームの井上と申します」

「営業部の森沢と申します」
深々と頭を下げ、今度は真正面から井上さんの顔を見た。

確かに。
梨花ちゃんが、無理言って同席したがるほどのいい男だ。

仕事中、クライアントについて、あんまりそういうことは考えないんだけど。

こういう、飛びぬけた容姿の人を見ると、つい、見てしまう。

「森沢さんとは、初めてですね」
おまけに、爽やかな営業スマイル。

「はい。でも、お噂は、うかがっております」

「へえ、どんな?」

思ったより、気さくな人だ。
いたずらっぽく笑いかけてくる。

「どうせ、仕事と関係ない事ばっかりでしょう?」

彼は、ビジネスバッグの中からスケジュール帳を取りだした。

私は、井上さんがページをめくる指先を見ていた。

こういう、アナログなアイテムを頑固に使う人って割と好きだと思う。

「どうかした?」
横に座っていた、新井さんが聞いてきた。

「じゃあ、始めましょうか?」

婚約者がいるって聞いておいてよかった。

手帳をめくる指先にドキッとしちゃった。