二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

考え事をしていた。

だから、いつのまにか、彼女がすぐ横にいる事に気がつかなかった。

「私も一緒に参加していいですか?」
私に背を向けて、新井さんに猫なで声でアピールしている。


「平田は、打ち合わせに出ても意味ないだろう?」
新井さん、結構クールに梨花ちゃんに対応する。

「だって、ineホームって井上さん来るんでしょう?」

クライアントのineホームは、駅ビルなんかに入っている家具ショップのチェーン店だ。

「仕事に関係ないやつがその場にいても、意味ないだろ?」
新井さんが、素っ気なく言う。

「新井さん、課長いないんだからいいじゃないの」
梨花ちゃん、猫なで声をまだ続けている。

「ダメだよ。そんなこと許したら俺が課長に怒られるだろう?」

「ineホームの井上さんって、すんごいいい男なんだなあ。おまけに次期社長だし」

「梨花、残念だけど彼には婚約者がいるぞ」新井さんが釘をさす。

「なあんだ。でも、それでもいいかも」

それでもいいって、どういう意味だ?