二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

高岡さんは、熱心に話し出した。

これまで何度もこういう場に駆り出されて、仕事も支障をきたすし我慢ならないのだと。

「いいかい、君もこれからこういう目に合うぞ。本当に人ごとじゃないから」
彼は脅すように言う。

「でも、断っていればそのうち諦めないかなあ」

彼は即答した。

「いいや。まず無理だから。特に、うちの母の言うことなんか聞き出したら、君も同じ運命だって」

「でも、そんな都合よく行くとは思えません。付き合い続けるってお互い好きな人が出来たらどうするんですか?」
自分で言ってて、本心ではそんなこと考えてるんだと思った。

「君は?今どうなの?そういう人は?」

「えっと、特には……」
昨日はいますと答えたけど、今日になっても連絡がないと見込みはないのかもしれない。

「だったら、それまででもいい。そのうち何か考える」

「あの……付き合うって、どういう意味ですか?」

彼は、快活に笑った。

「ごめん、ごめん。肝心なこと言ってなかったね。もちろん、表面だけ。でも、何もしてないと直ぐに疑われるから、時々こうして会ってくれて、食事でもしてくれればいいよ」

「はあ、それなら……」

「何とかなりそう?」

「さっきの。一生結婚なんかしないなんてやめてくださいね」

「君が裏切らなきゃ、そんなこと言ったりしない」