「えっと、ただいまご紹介に預かりました、荻野伸二です。営業三課を任せていただくことになりました。経験不足の若造ですがよろしくお願いします」
6年経った彼は、ずいぶん成長して大人っぽくなって帰って来た。
来たばかりの頃は、あんなに体つきもしっかりしていなかったし、緊張してたせいか余裕も今ほどなかった。
当たり前か。
いつまでも22歳の若造君のはずがない。
彼が私の方を見る。
お返しに、私も軽く微笑む。
「私も、ここの営業部で鍛えられた後、企画部に行って、またこの営業部に戻ってきました。力不足のところがあるかと思います。精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」
彼は、難なく頭を下げた。
ここに来た時は、頭を下げるのが一番苦手だったのにね。
当時は、本当に反抗的で言うこと聞いてくれなかった。
『どうしてこんなに、頭下げるんですか?』
『いいから。まず、出来る人のまねをしなさい。実際に売ってる人のまねをしてごらんなさい。自分のやり方のどこが間違ってるのか、考えなさい』
彼は、私の顔を直視せず、ぷいっと横を向いてしまった。
その時の顔を思い出すと、つい口元から笑いが出てしまう。


