食事は、差しさわりなく、お互いの母親同士のおしゃべりで始まった。

何しろ地元の女子校でずっと過ごした彼女らは、すでに半世紀近くこうして集まっては話している。

滞りなく食事を終えると、ラウンジに移動した。



「じゃあ、誠、葉子さんをお願いね」

敏子さんが、息子に耳打ちすると、母と一緒に
「それじゃあ、私たちはこれで」と言ってフロントの方に行ってしまった。

フロントの前のソファには、叔母が座っていて、私にだけ分かるように小さくガッツポーズをした。


フロントの近くで、3人が嬉しそうに話している。

ああ……
いいな。ああやって、三人で合流するんだろうな。

羨ましいわけじゃないけど、私も向こう側へ行きたい。


「どうしますか?」
いきなり、男性の声で現実に引き戻された。

「えっと……」
声をかけられて、私は高岡さんの方を見る。

何だろう。

ああ、そっか。

これからの事、聞かれてるのか。

「そのお着物じゃ、ホテルの中にいた方がいいですね」

「はい。そうしていただけると助かります」
私は、よろしくお願いしますと、軽く頭を下げた。