高岡さんは、落ち着いていて、優しげで品のある人だと思った。

私が緊張しているのを見てとると、緊張をほぐすように、口元を緩めて微笑んでくれた。

立ち居振る舞いもそつがなく、誠実な人のように思える。

「まあ、きれいなお着物ね。素敵だわ」

「ありがとうございます」

「高岡誠さん、商社にお勤めで、あなたより3つ年上の34歳。やっぱり、落ち着いているのね」母は満足そうに言う。



「お昼でも食べながらお話ししましょうか」

ホテルのラウンジを抜け、予約したレストランに向かう。

高岡さんは、母たちが先に行ってしまって、遅れがちになる私を気遣ってくれた。

顔は整ってる方だと思うし、こうして気配りもできる。
普通にしてれば、こういう人は見合いなんかしなくたっていいと思うのに。
何で、お見合いなんかしに来たんだろうと不思議に思った。

「葉子さんがお着物にするって聞いたので、今日は和食にしましたよ」
予約した店の前で、母たちが私たちが来るのを待って言った。

「和食?」

私は、驚いて母を見る。
母は、私に気が付かないようにして敏子さんの方を向いている。

いったい、いつから?
着物を着るって言ってあったの?

「どうかしましたか?和食はお嫌いですか?」

高岡さんにそう言われて、慌てて違うと言い訳した。