カーテンから、わずかに明るい日差しが差し込んでいる。
私は、くっつかない瞼を無理やり閉じる。
少しでも眠らなきゃ。
昨日は、ほとんど眠れなかった。
見た目にも寝不足って言われそうだった。
寝て起きたまま、ひどい状態でキッチンに向かう。
「あれほど早く寝なさいって言ったのに、ちゃんと寝なかったの?」
朝から母のお小言で、食事が始まった。
「どうしてこんなに早いのよ」
まあ、予想が付いたけど、一言くらい言わずにはいられない。
「朝早くから支度しないと、間に合わないでしょ?髪の毛もきれいにしてもらわなきゃ」
「ねえ、まるで結婚式みたいねって思わない?」
私は、由利子叔母に味方になって欲しくていう。
「いいんじゃない。どうせ着飾ってもらうなら、とことん飾ってもらった方がいいわよ」
私は、叔母の方を見捨てられたみたいな目で見る。
「振袖よ。30過ぎの女が着て来たって笑われたりしないかな」
この着物をあつらえた時も、レンタルでいいって頑張ったのに、結局一人娘なんだからと押し切られた。こんなことになるんじゃないかと予感してた。
「それはないわよ。敏子さんとも話し合ってお着物がいいってことになったんだから」
娘に着物が着せられて、嬉しそうな母。
「いいじゃないの。どうせ、その着物成人式に一度しか着てないんでしょ?」
なんか、由利子叔母、今日は母さんの味方だ。
「うん。そうだけど」
「何よ?」
母が、お味噌汁の茶碗を手にしながら顔を上げる。
「だって、着ものなんか着て行ったらずいぶん乗り気になってるみたいだもの」
「当たり前じゃないの。乗り気じゃないなんて言ってる立場ですか!特別嫌だってことがなかったら、さっさと決めなさい」母が吠えた。


