「あの、大丈夫ですか?」
加藤さんに心配されるほど、長い時間考え事してたみたいだ。
「ごめんなさい。いろいろ考え事をしてしまって」
さっきとは、打って変わって心配そうに私にも気を使ってくれる。
「いえ、いいんですよ。彼に対して何もできないのは、私達も同じです」
「車、私が運転してあげればよかったかな」
「そんなことまで考えてたんですか?」
「動揺してるんじゃないかなと思って。綾香ちゃんて、ご存知ですか?」
思い切って加藤さんに聞いてみた。
「大学生の女の子?どうだろう。後輩にしては年が離れてるし、親戚の子とか、近所の子かな?」
「よく話に出て来てたから名前は知ってるけど。会ったことないし、伸二もはっきり誰だとは言ってなかったな」
「そうですか」
「えっと。あまり気にしないでよ、森沢さん」
「お気遣い、ありがとうございます」


