「今、どこにいる?大学?ちゃんと答えて!大丈夫じゃないだろう!すぐに救急車呼べよ」
「荻野君?」
彼には、私の声が聞こえていない。
「おい、周りの人に助けてって言えよ!遠慮してる場合じゃないって!」
途中で、誰かが代わりに電話に出たみたいだった。
荻野君が、立ち上がって「君は誰だ?」って苛立ちを隠せずに話していた。
荻野君は、相手をまくしたてて状況の説明を聞いていた。
電話の相手はその場に居合わせたお友達のようだった。
その子から、綾香さんという女性が突然、呼吸が苦しくなって、救急車を待っているところだと聞かされていた。
「綾香!くそ、何てこと。悪いけど君、病院が分かったらこの電話に教えてくれないか。今すぐに病院に行くから」
「あの……」
「ごめん、行かなきゃ」
心、ここにあらずという感じだった。
彼は、酷く動揺してるように見えた。
「うん」
「葉子さんの事、所長に頼んでおくから、ごめん。俺、これで失礼する」


