「その手、握ってもいいかな」
少し照れながら言う。
「もちろん。言いに決まってる。そんなこと、わざわざ聞かなくていいのに」
私は、両手で彼の手を包んだ。
彼は、ぶるっと頭を振って、私の手をギュッと握り返してくる。
ごつっとした大きな手が不器用に優しく包んでくれる。
しばらくお互いの手を、握りあったままでいた。
彼は、私の手を離そうとせず、軽く撫でている。
彼は、ずっとうつむいたまま手私の手を見つめている。
あまりにも長い間そうしてるから、私の方から声をかけた。
「どうかしたの?」
下を向いているから、何か悩んでいるのかなと思った。
「気になることがあったら、ちゃんと言って。早まって、私に余計なこと言っちゃったとか?」
今度は手を逆にして、私が、彼の大きな手を優しく包みながら言う。
「ちょっと、まだ頭が混乱してる。本当に夢じゃないんだろうかって、思って」
「ん?夢って……」
「葉子さん、俺の気持ち分かってて、受け入れてくれないんだと思ってたから」
受け入れてくれないって……
まさか、そんなふうに思ってたなんて。
「ごめんなさい。荻野君、私、いつもあなたが冗談で言ってると思ったの。真剣じゃないって思ってたの。
だから、私も、あなたの事が気になるって言ったら、途端に、そんなの冗談だよって、あなたに笑われると思ってたの」
「照れ隠しですよ。分かってください。本気で好きな人にまともに行けるほど、俺、強くない」


