『週末、空いてる?』
なんて言われて、どういう意味だろうなんて散々考えた。
彼は、すぐには理由を言わなかったから。
どうにも理由が分からなくて悩んだ挙句、荻野君に聞くと、
『ああ、ごめん。俺、行先のこと話してなかったっけ』
という答えが返って来た。
『工場に行くんだ。森沢さん、バイオ関連の施設まだ見てないだろう?』
『ええ。そうだけど。そっか、工場か』
ほっとしたと同時に、少しがっかりした。
私の様子を見て、彼は笑ってる。
『どこに連れて行かれると思ったの?』
『べつに、何も』
そうですか。
そのために、デートの誘いだったらどうしようなんて、余計なことまで考えたのに。
『何だと思った?別のところに行きたかった?』
『な、なんだか分からなかったから聞いたのよ。私から行きたいって言ったわけじゃないもの』
何うろたえてるのよ……
そんな顔してると、誘われたかったみたいに見えるじゃないの。
『そう』
答えを聞くまでの時間、さんざん悩んだんだから。
その時間返してよ。


