二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~





次の朝、約束通り、10時きっかりに荻野君はやって来た。

駅で待ち合せしようって言ったのに、ついでだからと自宅まで迎えに来てくれた。

それは、ありがたいのだが……
車で迎えに来た同僚を、興味津々の母が、黙って見逃すわけがない。

家に上がれと言い出して、諦めさせるのに苦労した。


ようやく彼の車に乗り込んで、食い下がる母に手を振った。


「お願い。帰りは絶対に駅でいいから」


「どうして?きっと夕食用意して帰りを待ってるよ」
面白がって言う。


「本当だ。電話して釘刺しとかなきゃ」
私は、おもむろに電話を取り出してかけようとした。


「俺は、いいよ。付き合っても。酒は飲めないけど。飯くらいいくらでも」

嬉しそうに言う彼。
何が嬉しいんだか。


「ダメ。そんなことしたら。付き合ってる相手だと思って、母にぬか喜びさせるだけだから」


「別に、いいじゃないか。それでも」


「どこがいいのよ。もう、人ごとだと思って」