父が元気でいたころは、仕事はほどほどにして、自分の家と同じように相手を見つけて仕事は辞めるつもりだった。
家の仕事の邪魔にならない程度に働いて。
私も大部分の女の子と同じく、最初から仕事なんかに思入れがなく、早く結婚して仕事は辞めたいと考えていた。
でも、就職してすぐ、父が亡くなった。
私は、残された母と二人で暮らすようになると、いつの間にか母は、私を父のように頼ることになった。
父のいない不安から、母に頼られてる私は仕事を止められなくなり、父が不在になったことで、母は私に依存しがちになる。
今では、こんな自分が、職場に残って、仕事に燃えていた同期の女の子は、ほとんど会社を辞めていった。
「随分前に買った、カシミアのセーターがあるから、それとスカートでいいじゃない」
私もそう言って、頑張ったのだけれど母は、まったく折れようとしなかった。
「そんな恰好させたら、私が女手一つで育てたからだと……」
「もう、いいから。好きにして!」
結局、土曜日の日に仕事帰りに店に寄って、適当に見繕ってくると母の言いなりになった。
土曜には、完璧にしようと持ちかえった資料も、家に帰って読み込もうとしていたのに、私は疲れてろくに資料もみないで寝てしまった。


