私は、一人関係ない場所で高みの見物をしていた彼の元へ行った。
彼が、笑いを堪えているのを見て背中を思い切り叩いた。
「全然面白くないから、もう」
「葉子の演技力の酷さはよくわかった。けど、不審者役、本当に様になってたよ」
「不審者じゃないってば。ストーカーよ」
それには、分かったって笑って答えた。
彼は、ずっと家族のような3人を見ていた。
「んん、やっぱ。俺、男の子がいいな。あんな感じの子」
「そうね」
「あっ……でも、最初は女の子だからね」
「決めてるの?」
「んん……生まれる順番は、この際気にしないでおくか。数が欲しいからな」
「なに言ってるんですか?」
「何って。俺、葉子を嫁さんにもらって大家族で住むのが夢だから」
「夢、いつの間にか増えてるね」
「夢って、多い方がいいだろう?」
「まあ、そうだけど」
「いいな、ああして肩車してやるの」
高岡さん、ひどい。
私だけ悪者にして、自分だけ茂樹君に取り入れられてる。
「そうね」
しばらく、茂樹君にはにらまれるだろうな。
「肩車、してやろうか?」
「してやるって、私を?ちょっと、待って。ヤダ、止めてったら!」
彼は、構わず私を抱きしめる。
「ダメ。もう捕まえたから離さない」
抱きしめられて、温かくて優しくキスをされた。
彼は、一度手に入れたら大切にする人。
彼の温かさと、その言葉が私の中に残った。
【終わり】


