母に泊まっていきなさいと言われて、喜んで日曜日の夜まで、どっぷり家の生活に浸かっている。
高岡さんまで加わって、家は合宿のようになっている。
彼は、もともと家族が欲しかったから、家の母に対するあこがれみたいなものがある。
うちにいる間は、買い物に行くのに車を出しましょうか?
荷物を持ちましょうか?
家にいて、コタツでゆっくりしている母を見ると、肩でももみましょうかと、私のことはそっちのけで、かいがいしく働いている。
まるで、妻を得るより義理の母を得る方が嬉しいのか?と思うほど母にくっついている。
「楽しそうねえ、さっきから何の話してるの?」
三人でこたつに入っていたとこに、台所の片づけを終えた母が加わった。
「ダメ。母さんに知られると敏子さんの耳に入るでしょう?」
私は、事情を知らない伸二君に言う。
「耳に入ったらまずいことなの?」母が面白そうに言う。
「まずくないですよ、お義母さん」
荻野くん……
じゃなくて伸二君は、うちの母の言いなりだ。
彼は、母の手料理を美味しそうに食べて、胃袋どころか心まで奪われているみたいだった。
「おい、お前ら分かってるか?自分たちばっかり幸せになりやがって」
高岡さんが僻みっぽく言う。
「高岡さん、やっぱりA案で行きましょう」伸二君が嬉しそうに太鼓判を押す。
「どうして、そんなに自信たっぷりなんだよ。その根拠は?」高岡さんが聞き直す。
「何となくです」
「なんとなくじゃなあ。信用できるかって」高岡さんが枝豆の殻を放り投げる。