挨拶に来てからは、彼は、私の家に入り浸るようになった。
こたつに入って、母の作るものを、本当に美味しそうにいくらでも食べるのだ。
「俺、マンション引き払ってここに引っ越してこようかな」
これは、冗談じゃない。
本気で言っている。
「葉子いいの?」母が驚いて私の方を見る。
「いいのよ。母さんとしては、ゆっくり一人暮らしができるって思ってたんでしょうけど」
「お母さんの方も、俺がくっついて来てもいいんですか?」
彼が母の方を振り返って言う。
「いいも何も、あなたはもう、うちの息子と同じでしょう」
「はい」嬉しそうな彼。
そして。
週末になると、もう一人客が増えた。
高岡さんも、やってくるようになった。
家で一人でいると敏子さんが、次の見合い写真を持ってくるからと言って、ここに居れば安心だと言ってうちにやってくる。
金曜日の晩には、男二人で母の作ったおつまみを肴に晩酌を始めてる。
それに、この二人兄弟のように仲がいい。
それは、テーブルを拭きながら微笑ましく見ていた。
私がキッチンに行ってる間に、ひそひそ声で相談を始めてるし。
んん?
「ちょっと、待って!」
何気なく聞いてると、相談の中身が私も関係することだと分かって声を出した。
二人はさっきから、酔っぱらって二人で何やら議論してる。