母と叔母に、正式に荻野君とお付き合いをしてますと二人で挨拶した。

「そう、おめでとう」

素っ気ない母に比べて、喜んだのは荻野君じゃない、伸二君。

「ありがとうございます」

自分にも母が出来たと、信じられないくらいの喜びようだった。

「この子、奥さんもらうより、自分に母親ができる方が嬉しいみたいね」
と叔母に言われたほどだった。

それとなく彼が、両親を早くに亡くしていて、家族ができることを心待ちにしてると伝えると、この二人の方が、未来の義理の息子と義理の甥っ子にいっぺんに気持ちが傾いた。

週末ごとに実家に来て、中年女性二人に世話を焼かせて、嬉しそうに彼女らの言いなりになっる。

『大丈夫なの?母子だけじゃなく叔母までくっ付いてきたら、うっとうしいでしょう?』
親切心からそう言ったのだが、荻野君は気にしていない様子だった。

『葉子さんと結婚したら、叔母さんも一緒に住んでください』などというものだから、一度に口うるさい叔母のハートまでつかんでしまった。

『俺は……年を取った親の顔が見れなかったから』
涙ぐんで言う姿が、とても彼らしく思えた。