二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

ホテルを出てからすぐに工場に向かう。

大きな石油コンビナートの敷地内の一角に、人の背丈ほどの培養タンクが設置してあった。

その培養液の中で、無数の小さな生きた細胞が、ゆっくりと回っている。

「これは、どのくらいの量が生産できるんでしょうか?」荻野君が質問する。

「いくらでも生産できますよ。色素も、量も、思いのままにコントロ-ルできます」恰幅のいい工場長が答える。

「そうですか」満足そうに答える荻野君。

「品質、生産量ともにコンピュータで制御できるようになりましたから、ご期待に添えると思います」

施設を見学した後は、研究所内で細かな打ち合わせをした。

たいしてトラブルもなく、順調だった。

製品が届くようになれば、自社の工場で生産ができるようになる。