二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

私は、二人分の出張の準備をしながら彼と話している。

さっきから、下着から洗面道具、髭剃りまでそろえて鞄に詰めてるところだ。

入院中にそろえたものをそのまま鞄に詰めるだけだから、たいした手間じゃないけど。

「本当に大丈夫なの?退院してすぐ出張なんて」

大丈夫なわけないでしょう?
食べるものだって気をつけなきゃいけない。

お酒だって、気がゆるむと飲んでしまうかも。

ああ、そんなことより体調が悪くなっても、諦めず出張の工程を、強行しちゃうんじゃないのかな。

「大丈夫。一週間経ってるし。それにもう日程は、先延ばしできない」

こうして彼の世話を焼いて気が付いたんだけど、荻野君人に世話してもらうのが好きなんだろうか?

私がシャツをたたんだり、着替えのワイシャツにアイロンをかけているのを、横にぴったりくっついて、嬉しそうに見ている。

「それはそうだけど。新井さんと私で行きましょうか?」
アイロンを置いて、言うだけ言ってみる。

すぐに真面目な顔して言う。

「ダメに決まってるだろう?野郎と二人で、君を泊りの出張なんかに行かせられるか」

「なに言ってるんですか?仕事でしょう?そういうケースだってあり得るじゃないの」

「ダメ、絶対にダメ。課長の権限使ってでも、絶対に行かせない」