二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~


週が明けての朝一の定例会議。

会社の会議室に、久々に全員が集まった。

今日の議題は、当面の課題であるineホームさんの製品を商品化させるために、協力してもらう工場と契約することだ。

高岡さんが間に入ってくれて、商談もスムーズに行われていた。

契約に当たって、荻野課長の実際に工場の見学が済んでからということになっていた。

荻野君の回復を待って、すぐに工場の見学が行われる。

そういう段取りで、工場側と話し合いも終わっていた。


工場は、大阪にある。

同行するのは新井さんか加藤さんのどちらかだろうと思っていた。

「すぐって、今週中に行くの。やっぱり考え直した方が……」
会議中も、私は当事者というより荻野課長の身内のような気持ちで会議に出ていた。

それで、梨花ちゃんに何度もにらまれた。


退院したと言っても、体調は万全のはずがない。

私は、そのことに気を取られて、詳細が説明されても他人事のように聞いている。

「今回の出張は、森沢と俺で行く」
荻野君が爆弾発言したときも、上の空だった。

「森沢さん?なんで?」梨花ちゃんが大きな声で言う。

「ine側とつながりがあるし、森沢は、一応主任だし。俺が居ない間のこと詳しく知ってるからな」

それは、新井さんもだと思うけど。

「いいな?」と私の方を見る。

「はい」