「いいよ。なんて呼んでくれても」
彼は、笑って言う。
「荻野課長。部下に、伸二なんて名前で呼ばれたら示しがつきません」
「ここじゃないさ。そういうのは、ベッドの中で聞きたい」
さらっと言ってくれるけど。
甘い声。本気で言われたんじゃないかと錯覚しちゃう。
冗談でも、ドキッとするよ。もう。
しっかりしなきゃ。仕事中だし。
「生意気なこと言うようになったじゃないの」
まったく。油断ならない。
もう少しで、声に出そうだった。
声に出して、動揺してるのがバレたら、彼に思い切りからかわれる。
「少しは、ましになったとこ見せたいんだけど」
「大丈夫だって。ちゃんと成長してますって。あの頃に比べればね」
実力が認められたから昇進したんだし、男性としてもとても魅力的だよ。
悔しいから口には出さないけど。


