二人の彼~年下の彼と見合い相手の彼 ~

「つまみも作ってあるから、ここで飲もうか?」
母は、父がしていたようにテーブルを片づけグラスを置いていく。

「うん」
熱いものがこみ上げてくる。
母にこうしてもらうと、父が横にいるみたいだった。


母が、一緒に飲もうですって?

毎日、まっすぐ帰ってきた父。
その父がいなくなってから、初めてだった。

父は、毎晩こうしてテレビをつけながらお風呂上がりの夕食前、父が晩酌していた。

母は、夕方父が帰ってくる時間になると、
突然「あっ、お風呂の用意しなきゃ」と言って立ち上がる。

すぐに、そんな必要なくなったことに気が付いて、ヘタッとソファに座り込む。


父のそういう姿が見られなくなったのは、ひどく寂しい気がした。

残念なことに、私は年頃だったから、一人で座ってた父の横に座ることはなかった。

いい匂いがして、母が、ビールとおかずにするつもりだったのか、肉じゃがをもってきた。

「美味しそう」

「ん、一番好きだったのよ。夕食のおかずをつまみに飲むのが。
だからかな。もっと薄味にした方がよかったのかなとか、もっと体に気を付けてあげてたらとか。そうしたら、今もまだ生きてたかな。
そんなふうに、後悔ばかりで、このビールの銘柄見るたびに後悔して」

「そうだったの?」

「ええ。これをスーパーで見るのも嫌だった」