荷物を取りに、そっと病室に戻る。
彩香さんが戻っていて、部屋に飾った花で華やかになっていた。
彼女がいると、部屋全体が明るくなる。
このまま家族として、誰も欠けずにいたいと荻野君以外の人は思ってるのだろうな。
「きれいでしょう?」
荻野君は、隅っこにいる私に気が付いた。
彼は、花から視線を移して、心配そうに私を見つめてくる。
こっちに歩き出そうとするから、大丈夫よと微笑んで見せる。
きれいにまとまった家族。
特別な時間を一緒に過ごしてきた、そんな関係に割って入りたくない。
私にも、そういう心地いい関係が別にある。
それを壊したくない。
「森沢?帰るの?」
「ええ」
「じゃあさ、頼んでいい?」
「はい」
「家によって着替え取って来てくれるかな?」
「ええっ?」
「それなら、私が……」
彩香ちゃんが、すぐにそう言った。