「そう」深くため息をつき、困惑した表情をした。

「ごめんなさいね。ため息なんかついて。何と説明していいのか分からないけど。複雑なの。伸二君のことを思えば……
好きな子が出来たって言ってくれるのは、特にあの子のように、自分からそう言ってくれるのはとても嬉しいことなの。でも、娘のことを考えると素直に喜べなくて。ごめんなさい。あの子は娘のこと気に入ってくれてると思ってたから」

私は、彼女の目を見た。
彼女の目は、深い愛情と二人を思う気持ちでいっぱいだった。

「荻野君、おじさまとおば様のこととても気にしていました」

「気にしてた?どういうこと?」

「えっと、私の口からは言えません」

「まあ、彩香のことで何かあったのね?」

「ええ」

「病気になったことと、何か関係があるの?」

「はい。多分原因の一つになったのかもしれません」

「そう。分かったわ。それなら、伸二君のことは、あなたに任せた方がいいわね」
ちょっと待ってくださいと口を挟んだ。

「いいえ。それはできません。彼がこうなったのは、私にも責任があります。
だから、彼の面倒を見ています。
私は、誰か代わりになる人が来てくれるまで。
そう決めてましたので、おば様か彩香さんに変わっていただきたいと思ってます」
そう言うと丁寧に頭を下げた。

「ええっと。伸二はあなたにいて欲しいと思ってるわよ」

「はい。私も、今日それを聞いて驚きました」